日本英語表現学会

日本英語表現学会第34回大会が比治山大学(広島)で開かれました。僕の古巣が開催校ということもあって、シンポジウム「電子辞書について」の提案者として指名を受けましたので、辞書利用の歴史的概観を少し踏まえた提案を行いました(ハンドアウト集より)。

「学習者の語連想を喚起してやまない道具」として電子辞書を使いこなせたら、というのが出発点です。カギはジャンプ機能。例文検索を通じて「コロケーション関係」、英英辞典の定義語から「関連語」や「周辺語」へジャンプ。こうした縦横に広がる連想を辿りながら、語の用法の定着や語感のふくらみを身につけていくことができれば、と考えています。

辞書は普通、予め求めたい情報があって引く(「ゴール志向」)ことが多いのですが、ときには連想を飛ばしながら行きつ戻りつする「プロセス志向」の引き方を楽しんでも良いのではないでしょうか。例えば、予め用意された単語の訳語を急いで知る「演繹的語義学習」から、例文の訳文を頼りに最適な訳語を求める「帰納的語義学習」へシフトするため、「まずは例文検索から」という引き方を提案しました。この方法だと複数の例文を一度に表示できるため、電子辞書の欠陥の一つとされる「一覧性の欠如」を解消する手立てになるかも知れません。

「辞書は読むもの」と言った先人が多いのは、こういうことなんだろうな、と考えています。

「語の知識の多様性」(Nation 1990)、「語彙学習の漸進性」(Graves 1987)、「反復遭遇の重要性」(Schmitt 2000)を考えるとき、「プロセス志向」の学習はより重要になってくるでしょう。このプロセス志向の学習を促進する「語彙拡充ツール」として、電子辞書の活用法を考えていきたいと思います。

貴重な機会を与えて頂いた大会関係者の皆様に感謝です。