英学史支部ニューズレターNo.52

日本英学史学会中国・四国支部ニューズレターNo.52を発行。
今回の「広島英学史の周辺(18)」です。
▼会員の中村朋子先生(広島国際大学)より、9月22日に実施されたイベントについて連絡を頂きました。大学主催のシニア・サマーカレッジの一環として「日本人はどのように英語を学んできたか」と題する講座を担当されたそうです。講座とともに「明治以降に日本で使われた英語教科書を手に取りながらその変遷を見る」という企画展示が行われ、中村先生が国内の古書店で集められたナショナルリーダー、神田や津田のリーダー、ジャック・アンド・ベティなど、明治期から昭和期までの教科書を見るために20代から70歳近い人まで20名ほどの参加があったそうです。歴史上の教科書をジェンダーや文法の視点から分析する中村先生の研究紹介の後、参加者に、教科書を手にとった感想を声に出して周りの人と話してもらったところ、次のような声が挙がったそうです。

・昔は難しいことをやっていたものだ
・情報量が多くて、勉強になる。
・現代の英語教科書の問題点が良く分かった
・独習書の呼び名。「これは教科書ガイド?」「私たちの時には三文といっていた」
・この番号は何?日本語の語順だ!(独習書を見て)
・日本語訳の意味がわからないよ。
・日本の英語教科書の文法統制は、第二言語習得の研究の発達とも関係があるのでは(日本語教師の声)

「参加者の皆さんに喜んでいただき、手ごたえがあった」と中村先生。次の企画を考えていらっしゃるそうなので、楽しみに待ちたいと思います。
香川大学図書館では、一般公開行事・神原文庫資料展「西洋語まなび事始め」を開催中です(高松市幸町1−1 香川大学図書館3階 神原文庫展示室。10月28日(日)〜11月4日(日)9:00〜17:30)。11月3日(土)には、「日本人はいかに英語を学んだか ― 幕末・明治初期のようす」と題する講演が行われます(講演者は竹中龍範教授。14時〜15時。入場無料)。問合わせは香川大学図書館情報サービス担当まで(TEL 087-832-1249 FAX 087-832-1257
E-mail: libsabis@ao.kagawa-u.ac.jp)。香川大学図書館ホームページ http://www.lib.kagawa-u.ac.jp/
▼風呂鞏先生より『八雲』19号(焼津市小泉八雲顕彰会)を頂きました。「大谷繞石の『滞英二年・案山子日記』」「高木大幹先生を回想して」の二編の論考を寄せていらっしゃいます。ハーンの弟子や研究者など広範な研究対象へ向け、風呂先生は常に温かい眼差しを注がれつつ、精緻な論考を重ねていらっしゃいます。
▼関連学会の研究例会が広島で開催されます。日本英語教育史学会の11月例会は、11月18日(日)午後2時より、広島市まちづくり市民交流プラザ(広島市中区袋町6-36  TEL: 082-545-3911)で開催されます。研究発表は西 忠温氏(元 崇城大学)「ある明治期高等小学校英語科教師の学習暦と履歴 ― 五高教務掛雇・古閑留彦の場合」、安部規子氏(有明工業高等専門学校)「福岡県立中学修猷館一覧について」の2本。参加無料。問い合わせは日本英語教育史学会事務局まで。
和歌山大学教育学部 江利川研究室 TEL&FAX 073-457-7433 erikawa@center.wakayama-u.ac.jp)
▼日本英学史学会会員の東 博通先生(名城大学)より、このほど出版された『北の街の英語教師 ― 浜林生之助の生涯』(開拓社、2007年)をお送りいただきました。浜林生之助は広島高師に学び(7期生)、後に小樽高商教授。伝記に掲載された高師在学中の成績表や、授業中に浜林が訳した箇所には教師の訂正が入らなかったというエピソードなど、初期の頃の広島高師の様子をうかがうことができます。
▼浜林より1歳若く、高師入学は1年早い世良壽男(後に大谷大学哲学教授)のことは、この欄や『英學史論叢』でも触れたことがあります。そのときに資料のことでお世話になった大谷大学を訪ねました。世良教授在職当時のことを調べてくださった職員の方と、教え子で同大学名誉教授の先生のお話を伺う機会に恵まれ、感激でした。こうした素晴らしい出会いは、英学史研究を続けるモティベーションを一層高めてくれます。
▼あっという間に深まる秋。12月は山口でお会いしましょう。(馬)