英教史: 月報217号

日本英語教育史学会月報217号を発行。会員の皆様へのウェブ配信と郵送を完了しました。
今回の Editor's Box です。

▼「暦の上ではもう春」というこの時期の決まり文句には、春を待ちわびる気持ちが込められているように思います。この冬の厳しさは一層、待ち遠しい気持ちを強くさせます。▼日本の冬よりもっと寒いであろう英国で研究生活を送っていらっしゃる嶋津成子先生より、「海外だより」へのご寄稿を頂戴しました。言葉をめぐる先生の洞察は、研究の視野を広げてくださるように感じます。▼最近手に入れた『季刊is』のバックナンバーに「精神の『北』」という特集があります(63号、1994年3月、ポーラ文化研究所)。英文学者の柳瀬尚紀氏による「北国が北国でなくなるとき」は、寒い所が寒くなくなるという寒い話を、寒いギャグの連発を装って「小説もどき」にした巧みなテクスト。改めてこの作家の、そして日本語と英語の語彙の豊かさを思います。この人の文章を読むときは『広辞苑』が欠かせませんね。新版を寒い寒いと拾い読み。▼来月は広島でお待ちしています。春も一緒に。(HB)

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さて、上に書いた「寒い」のうち、ギャグと結びつく語義は第6版の今回から加わった模様。こうした本編の変化に加え、見出し語に辿り着くための漢字・難読語一覧やアルファベット略語一覧を含む「付録」と、本編から季節に関連した語など取り上げた新書サイズの「一日一語」も、辞書を読む楽しみを増してくれます。
辞書を読む柳瀬尚紀氏の文章を英和辞典の紹介サイトで見つけました。誤植探しの愉楽、いいですね。
http://www.taishukan.co.jp/item/genius/yanase.html

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学習指導要領の改訂案が発表されました。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080215/edc0802151724003-n2.htm
「小学5、6年で外国語活動を必修化。中学では、授業時間を週4時間に増加。指導語数を1200語程度(現行900語程度)に増やす一方、必修単語は廃止した。」とあります。
中学校の新旧対照表は以下のサイト。
http://www.hi-ho.ne.jp/chiri/kaiteian/chugaku/chu_gaikokugo_0215.pdf
これから詳しく見ていきたいと思いますが、扱う語数と指定語(必修語)の扱いを見た感想は、「おお」。
520語を指定した「別表」が登場してから半世紀。ついに若林俊輔氏が私家版『「指定語」の変遷をたどる』の中で「2010年頃の改訂で消える」と予言した通りになりましたね。
1,200という指導語数も50年前の水準に。計算すると1時間あたり3語程度になりますが、これは戦前の竹原常太の頃から続いているように思います。
いずれにしても、今回の変更を歴史的な流れの中で、検証してみたいと思っています。