英学史支部ニューズレター

日本英学史学会中国・四国支部ニューズレターNo.42を発行しました。
「あとがき」の代わりに綴っているコラムです。

広島英学史の周辺(8)
▼広島高等師範学校附属中学校を前身とする広島大学附属 中・高等学校『創立百年史』が刊行されました。全3巻(上 巻・下巻・別巻)、約2,000ページ。日本一の学校史を作るべ く、渾身の力で上下巻1,500ページを書き下ろされた恩師・ 小山清先生のお仕事に対し、心から敬意を表したいと思いま す。私を英学の世界へ誘ってくれた母校の百年史に、口和町 で発見された教生授業案下書(明治44年)の写真を提供でき たのは、望外の喜びでした。▼山田雄一郎『日本の英語教育』 (岩波新書, 2005)は、「 日本の英語教育を振り返り、現状を 分析し、未来への手がかりをもとめること」(まえがき)を目 的とする新書です。「歴史的な視点を活用」と述べている通り、 福澤をはじめとする明治の日本のリーダーたちの英学、英語 存廃論、明治の小学校英語など、私たちに馴染みのある話題 への言及もあります。英語教育を冷静に眺めるための視点が 随所に溢れる好著だと思います。▼東京・神保町でよく立ち 寄るのは「日本書房」という古書店。先月出会った英学関係 の書は、岡倉由三郎『英語発音学大綱』( 三省堂, 1906)でし た。拾い読みの最中に「目からウロコ」の表記に多数出会い ます。有声音と無声音のことは「こえ(voice)」と「いき (breath)」。consonantは子音ではなくて「父音」。この分野 に詳しい方々には常識的なことでも、私にとっては嬉しい新 発見が続きます。巻末には左ページに英文テキスト、右ペー ジにはテキストに対応した発音記号のみの表記。パーマーの Standard English Readersを思い出しました。▼半年ぶりの 例会。広島でお会いできますことを楽しみにしています。(馬)