英学史:ニューズレターNo.81

支部ニューズレターNo.81を発行。
http://tom.edisc.jp/eigaku/newsletter_bn/newsletter81.pdf


広島英学史の周辺(47)

明治から戦前期までの英語教科書や独習書を集めていると,たびたび余白に書き込まれたメモを見つけます。英単語の発音がカナで記されたり,訳語が書かれていたりします。筆記体によるスペリングや,自分の名前(サイン?)を繰り返し書いたものも。▼数多くの参考書を著した木村明先生のことは,ニューズレターNo.62 (2010年4月) のエッセイで触れました。それ以来,広島ゆかりの先生の著書を集めています。『1. 2. 3年の英文法』(文進堂書店, 1937)の序文には,英語の文を「文法のあたま」で見る習慣をつけ,日常の解釈や英作文に応用する方法を示すことを目的とした,とあります。手にした17版は昭和16年の印刷。ページをめくると,赤鉛筆のアンダーラインや,ペン書きのスペルがあちこちに見られます。関係代名詞の課では,The ship which (that) has a long mast runs fast.という例文に触発されたか,「士官」「豫科生徒」「海軍兵學校」という文字も。自らの進路を思い浮かべたのかもしれません。▼書物への書き込みは,学びの痕とともに,持ち主の思いまでも伝えてくれるようです。表紙の裏には,「楽しく」「馬」と記されており,一気に親しみが増しました。▼寒い日はまだまだ続きそうです。皆様どうかご自愛ください。(馬)