講座終了

英語を担当する同僚とともに取り組んだ講座が無事に終了しました。
http://www.pu-hiroshima.ac.jp/~umamoto/koza02.pdf
最終日、自分の担当でもあり、終った途端にホッと力の抜ける思いでした。

庄原の生んだ倉田百三の『出家とその弟子』。グレン・ショーによる英訳を紹介しながら、作品の背景や日英比較、学習法の紹介など、いろいろ盛り込んだのだけど、ちょっとポイントが絞れていなかったな、と反省。ただ今回も、発表者が一番勉強になったと喜んでいます。
『出家』は大正6年に出版され、旧制高校の学生を中心に広く読まれた「青春の書」と言われます。手元の一番古い版は大正10年、124刷ですが、凄いペースで増刷されていたようです。作中のセリフのあちこちに、共感を覚えるフレーズが溢れています。それらをほんの少し、英訳と対比させながら紹介していきました。

親鸞:私たちの魂の真実をごらんなさい。私たちは愛します。そしてゆるします。他人の悪をゆるします。その時私たちの心は最も平和です。私たちは悪いことばかりします。憎みかつのろいます。しかしさまざまの汚れた心の働きの中でも私たちは愛を知っています。そしてゆるします。
Shinran: Look at the reality of our souls. We love. We forgive. We pardon others’ faults. Then our hearts are most peaceful. We do but evil. We hate and curse. But in the midst of the diverse workings of our soiled hearts, we know love. And we forgive.

百三自身、この戯曲の中の親鸞は「あくまでも私の親鸞」と述べているように、史実や親鸞の教えを忠実に再現したものではないところもあるようです。仏教的なものと、キリスト教的なもの。それらが融合した美をロマン・ロランは絶賛しました。
大正11年に北星堂から出された英訳 The Priest and His Disciples: A Play は原文に忠実で、平易な英語で書かれ、音読して実に心地よいものです。残念なのは、この英訳が古書でもなかなか手に入らないこと。Internet Archive にはPDF版と、スキャナで読み込んだのであろうテキストファイルがありますが。

海外での上演記録や、映像資料があればな、とも思います。
今回の講座の準備を通じて、この作品への興味がますます深まりました。もっともっと掘り下げて研究してみたいと思います。