カード学習

英語カード

 昨年秋に、英語カードを入手した。

  • 英語研究編輯部(編)『学年別英語カード』研究社, 1909.

 手に入れたのは、この第三学年用と第四学年用。いずれも増補訂正第70版で、第三学年用の箱の裏には大正9年、第四学年用には大正10年の発行とある(初版は明治42年)。値段は各函金壱円。箱は紙製だ。横6センチ、縦3.5センチほどのカードが、15センチほどの厚みで箱の中に納まっている。2つの箱の中に、2〜4年用のカードが混在している。どうやら全てのカードは揃っていないようだ。
 カードには学年を示すローマ数字と、アルファベット順に数字で通し番号が振ってある。表に英単語と例文。発音や品詞、語形変化に派生語も記されている。例えば、

II. 293 グらマ
 名 grammar
   名 grammarian
   形 grammatical

1. We learn Kanda's Grammar at school.

「グらマ」のカナ表記の隣にウェブスター式の発音符号も記されている。なお、4年生用のカードにカナ表記は無い。

 裏には訳語と訳文。

名 文法
名 文法家
形 文法上の

1. 私達は学校で神田の文法を習つてゐます。

 このカード、大正15年に『研究社英語新カード』として新たに刊行されるまでに、第五百数十版、五百有余万の大部数を売り尽くしたと言う。こうしたことを、

  • 研究社編輯部(編)『学年別研究社英語新カード説明書』研究社, 1926.

の序文に、吉田幾次郎が記している。
 この説明書は、昨日届いた『英語新カード』の箱に入っていたものだ。今回入手したカードは1年生用。ブリキ製の四角い缶に入った714枚(完全に揃っているかどうかは確認中)。上の「新」の付かない『英語カード』の箱とほぼ同じ大きさの缶で、中のカードのサイズも一緒だ。記述内容も引き継がれているが、発音はカナとウェブスター式に、IPAの記号が加わっている。
 缶の中に2冊の説明書が入っており、一方は昭和8年の208版、もう一方は昭和10年の350版とある。どちらかは他の学年の箱に入っていたものではなかろうか。
 
 100年前に出版され、版を重ねた英単語学習用のカード。この「カード」というツールが、外国語学習史にどう位置づけられるか、これから探っていきたいと思う。