英語教育史学会9月例会

日本英語教育史学会第196回例会に出席しました。
発表は(1)平成元年の中学校学習指導要領、(2)ネスフィールドの履歴、の2本。
(1)は発表後のフロアの議論が多いに盛り上がりました。指導要領を解釈するためには、その時代背景と、その中で生まれた教育政策を十分に理解しておかなくてはならないことを痛感しました。議論は教科書編纂にも及びましたが、英語教育史上「特定の教授法を実現するために編まれた教科書は、わずかに熊本謙二郎に見られるが、それ以外はない」との指摘は印象的でした。日本の英語教育の文化を検討する上で重要な点と思いますし、何より、こうしたコメントができる研究者になりたい、と思いました。
(2)では、斎藤秀三郎にも影響を与えたネスフィールドのインドでの仕事、そして彼の文法観の一端が具体的に示されるとともに、こうした研究の道筋が示された重要な御発表だったと思います。フロアから、インドでの経験を持つマイケル・ウェストへの言及がありました。「外国語として英語を学ぶ環境」での教授経験から学ぼうとする歴史は、今の英語教育にも示唆するところ大と感じました。
少し前に古書店から『意解挿入ねすふいーるど英文典第壱独案内』(栗野忠雄訳述 青野文魁堂, 1899)が届きました。その凡例に「印度学生ヲ教授シ其経験上ヨリ該文典ヲ編述セルモノナレバ」とあります。
こうした明治期の資料は、その多くが近代デジタルライブラリーに入っているので、今後は古書探しをする必要がなくなるかもしれません。研究者にとっては嬉しいことです。でも、やっぱり日本の古本屋で欲しいものを見つけたら、買ってしまいそうです。値段を見ながらですが。