正則ナショナル第三リードル独案内

umamoto2008-06-17

庄原出身の森 修一による訳著書。明治23年に出た第5版(初版は明治20年だが、当初は2巻に分かれていた。入手したのは合本版)。昨日古書店から届いた。手にした同書は3点目となる。
「独案内」とは独習書のこと。英語教科書中の全ての英文について、各英単語に発音・訳語を付し、訳す順を表す数字を添える形で、漢文訓読式のような英文解釈法が示されている。今で言う「教科書ガイド」。ただ、おそらくは、教師用指導書としても使われたものと思われる。
「ナショナルリードル」というのは、明治時代に最も広く用いられたと言われる教科書『ニュー・ナショナル・リーダーズ』(Barnes, Charles. New National Readers. Book 1 – Book 5. Barnes & Co. 1883-1884.)。米国の小学生用読本で、翻刻版が多数ある。段階を追った教材配列を行い、最終的には長い文学作品を読めるようにすること、および(母語としての)英語の総合的な運用能力を高めることを目的とするもので、読本の巻頭や章末に、これを用いる教師用の説明がほどこされている。
森 修一の「独案内」、巻頭の凡例の一項目に次の文がある。
「意訳中和歌あり詩あるは原文亦詩歌なるを以ての故なり」
例えば以下のようなもの。
How dreary would the meadows be / In the pleasant summer light / Suppose there wasn't a bird to sing, / And suppose the grass was white
鳥啼かず草に色なき世もあらば / 夏きにしげるむさし野も / いかにさみしき事ぞなるらむ
森修一氏の緒言によると、類書への不満からこの書を著した、とのこと。上の「意訳」も、特徴の一つと言えるだろう。
この書と関連したテーマで、月末には庄原市公開講座、来月は英語教育史学会での発表。
忙しくなりそうだ。