英学史:ニューズレター50号

英学史学会支部ニューズレター50号を発行しました。
>>>広島英学史の周辺(16)
▼昨年度春の研究例会から早1年が経ちました。こうして年月を重ねた支部30年。歴史の重みを感じます。▼30年前は私が中学生になった頃。『ブリタニカ国際大百科事典』(TBSブリタニカ, 1975)を前に、学問の面白さに触れ始めた頃だったかと思います。▼事典の別冊『スタディガイド』には、三樹精吉「百科事典の積極的利用法」があり、百科事典を出発点とする研究の道筋が描かれています。

「検索」→「目的とする情報の発見」→「その情報に密接な関連のある他の情報の発見」→「それらの情報のなかに含まれる別の興味からくる新たな諸情報の発見」→「新情報についての検索」(中略)「百科事典以外から得た諸情報という別の加工材料がつけ加えられ総合的に検討される」→「選択・整理された情報を材料とする目的物の体系的な組立て」・・・

▼百科事典は、研究の入口としての「知の集合体」と言うことができるでしょうか。30年経った今も手放せないのは、その入口の充実ぶりにあると思います。たとえば「英語」という項。14ページにわたりSimeon Potter(宮田斉訳)の英語史に関する解説が続きます。大学時代のレポートや、大学院の入試準備に役立ちました。▼インターネットによる情報革命が第2世代を迎え、「Web2.0」という言葉をよく目にするようになりました。その流れの一つが、ネット上の「集合知」を代表する百科事典「ウィキペディア」。ボランティア執筆陣によって急速な増殖を続けています。▼先に引いた三樹の「検索」の道筋を、ウィキペディアはネット上のリンクによって具体化しています。見出し語「英学」の項には、福沢や斎藤など、多数のリンクが張り巡らされています。▼支部30周年。蓄積された「集合知」をより一層活用することが、私たちの世代の使命かも知れません。昨年来、支部の先生方の業績を参考に、広島の英学史・英語教育史に関わる情報検索サイトの構築を進めています。シンポジウムではその一部を紹介できればと思っています。▼久々の比治山大学での例会開催。皆様、ぜひご参集ください。(馬)