広島英学史の周辺(56)

「日本英学史学会中国・四国支部ニューズレター」No.90より

平成17年2月,ニューズレターNo.41のこの欄「広島英学史の周辺(7)」に次のことを記している。

tsunami の初出がハーンの作品だということを昨年末の天声人語で知りました。OED の初版には登場しませんが,Supplement の第 4 巻に 1897年のGleanings in Buddha-Fields からの引用が
あります。“A Living God”の一節でした。

大震災の6年前。スマトラ沖地震による津波で多くの人が犠牲になり,tsunami に注目が集まった頃だ。▼この語を最初に英文で発信したのはハーンと思っていたが,大学の研究誌に「シルモアは,『津波』という言葉が英語になるきっかけとなった記事を書いた人」という一節を見つけた(天野みゆき「『不朽の島』への憧憬:エリザ・シドモアと宮島」『宮島学センター年報』(第3・4号)2013年,県立広島大学)。ハーンが着想を得たのと同じ,1896年6月の明治三陸地震について,同年9月に書いた記事という。▼このことは,第161回「広島ラフカディオ・ハーンの会」ニュース(2013. 1. 11発行)で既に取り上げられており,私の読んだ一節の元となった「紀行作家シドモア写真展」(宮島歴史民俗資料館)のことや,インターネット上のNational Geographic誌に言及してある。ハーンの作品は「厳密にはシドモアの一年後である。OED 編纂者の意見を聞く必要もあろう」と記し,「シドモア復権を考慮すべき日が来るのではあるまいか」と結んでいる。ハーンに関わる情報を具に集めておられる風呂先生ならではの記述に感動を覚えた。▼私は縁あって,今年から「宮島観光学入門(英語)」という授業に関わっている。上の「不朽の島」をはじめ,安芸の宮島にも「英学の気(け)」が溢れている予感がする。調べを進めてみたい。▼では皆様,高松でお会いしましょう。(馬)