英教史:月報218号

日本英語教育史学会の月報218号を発行した。(表紙ページは、ここ
今回のEditor's Boxです。(読み終わった後の桜もお楽しみください。)

EDITOR'S BOX 広島例会が終ると、あっという間に春がやってきます。桜の花はもちろんですが、その木々の下に集まる人々の賑わいにも心踊る季節です。
▼『英語教育』4月号に、水野 稚氏による投稿論文「経団連と『英語が使える』日本人」が掲載されています。経済界の提言に左右される英語教育政策。その実態を浮き彫りにした氏の指摘に、英語教師としてハッとさせられました。文科省が教育現場よりも経済界の声に耳を傾けるのであれば、英語教師の側にも「戦略」が必要かも知れません。「財界世論」醸成のために、英語教育界から財界へ働きかけてみるか・・・。今後の氏のさらなる鋭い論及に期待したいと思います。
▼本務校でe-learning促進の議論をしています。他大学の事例を研究中ですが、和歌山大学オンリー・ワン創成プロジェクト「e-learningをとおした国際コミュニケーション教育推進プロジェクト」成果報告書『e-learningと国際コミュニケーション』(2008)から多くのことを学びました。江利川春雄氏による「CALLシステムを活用した共通教育の英語指導」という論考では、学生の好意的な反応をもとにCALLの可能性を論ずる一方で、CALLはあくまでも補助手段であり、教育は本質的に「人と人との関わり合い」の中でしか達成できないと結んでいます。
▼e-learningにとって大切なのは、どこからでも学習の支援をする姿勢だと思います(たとえばメールを通じて)。そう、e-learningの「e」は、everywhereの「e」。
▼岸上英幹氏による大学用教科書『Familiar Things』(南雲堂, 2008)は、どこでも学べるCALL教材(執筆者には水野修身氏、横山多津枝氏も)。学習用CDには、かつて喫茶店の卓上を賑わしたゲームのような画面や、発音を鋭く判定する認識ソフトが組み込まれ、日本の歴史や伝統文化などを英語で表現する練習ができるようになっています。マイク付ヘッドセットも搭載され、大学教科書もついにここまで来たか、と驚かされます。
香川大学図書館報『図書館だより』No.4には、竹中龍範氏による「幕末・明治の英語図解単語集―『對譯名物圖編』(慶応3年)ほか」が掲載されています。大阪女子大学や筑紫文庫に所蔵されていない『對譯名物圖編』明治版や『英國單語圖解』上下揃いを持つ神原文庫の奥深さに改めて圧倒されます。図版を駆使し、英語図解単語集の流れを詳述した氏の論考には、いつもながら引き込まれてしまいます。
▼小中の学習指導要領が告示されました。指導要領が法的拘束力を持つ「告示」となった昭和33年からちょうど50年。検定教科書で扱うべき「必修語」は、半世紀で姿を消しました。
▼今年は節目の年。新年度前半の例会は、シリーズ企画もお楽しみに。(HB)

京都の会員の方から素敵な写真を送っていただきました。京都御所の近衛邸の糸桜、京都では一番早く咲く桜だそうです。毎年精力的に素晴らしいご研究成果を発表してくださるN先生に感謝です!